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サハラと聞けば『星の王子さま』の舞台となった空想の世界である一方、想い描く砂漠はドキュメンタリー番組に登場するエジプトのピラミッドや映画『アラビアのローレンス』の灼熱の太陽の下にひたすら広がる眩しい砂の広原でしかなかったりする人も多いに違いない。 |
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アルジェリア南東部のサハラ。砂の海と言えどもerg(砂丘)、reg(礫沙漠)、hamada(岩山)、tassili(台地)が広がり、間をoued(涸河)が通る。 |
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その昔火山活動の盛んだったこの地域には噴火の跡がそのまま地形に保たれ、大きな火口の中に更なる噴火が起こって溶岩が瞬時固まった岩山が、時には尖塔を、時にはオルガンのような姿を形成しながら聳え立つ台地。 |
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やがて風によって運ばれた砂が全面を被い、ところどころ岩が見え隠れする月面のような風景が限りなく広がる砂丘地帯。風の浸蝕によって刻された岩々は奇妙で多様な形を現し沙漠を表情豊かにする。砂もクリーム色から黄色、橙、桃色、深紅に至るまで華麗に景色を彩り、光と時間によって微妙に変化する。 |
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無数の壁画に描かれた狩猟、ダンス、神への祈りの場面や登場する動物たち197が証言しているように、かつては緑豊かな時代もあったこの地域も紀元前二千年ごろから乾燥化が進み、大地が無惨にまで変わり果てた中にも何かが煌きつづけている錯覚に陥るのは静寂の中に潜み、岩陰に隠れているguelta(水処)の存在の故だろうか。 |
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耳を澄ましていると風がさまざまな音を運んでくれる。それが虫の声音であったり、ところどころ生えているアカシアの乾いた枝が奏でる音であったり、刻まれてゆく岩の泣き声であったり、動物の微かな足音であったり、現代になってからは遠くを走る車のモーターの回転音であったりするが、水が潜んでいる場所に近づくと何故か音が全て吸収されていくかのような独特の沈黙が起こる。 |
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沙漠を旅する時は目に頼ってはいけない。ただ感覚を研ぎ澄まし、「空」を感じ、「気」を理解しなければならない。それでも岩山にはdjnoun(悪霊)が棲み人間を誑かすと言われている。悪霊の仕業であるかどうかは別として、暑さのあまり服を脱いだら文字通り皮膚が焼けてしまい、頭に巻いている布を外したら鼻と口に砂塵が入ったり、熱中症に倒れる。油断は大敵であり、常に風除けになり影を作ってくれるもの(岩がなければ駱駝か車)と水を確保する必要がある。夜は夜で冬など特に気温が氷点下まで下がるので毛布や防寒具を備えなければ凍え死ぬ可能性もある。
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